「………ん…」
目を覚ましたシカマルは、眩しい白い光に目を細めた。
怠い身体を起こしてみれば、雪が積もり窓の外が真っ白になっているらしいことが判った。
布団の外もひどく寒くなっていて、思わず身震いする。
「……メンドクセェなぁ………」
そうぼやきながらも、寒さに耐えきれずベッドから抜け出してストーブを点けた。
箪笥から服を取り出して着ると、置いてあるシノの服も出して、未だ布団の中で踞っているシノに差し向ける。
「おいシノ、服着ろ。寒ぃから」
「………。ん~…」
シカマルの声掛けに、シノが小さな声を漏らして身体を捩る。
少しの間布団にしがみついていたシノだったが、暫くすると目が覚めたのか、布団の合間から手を伸ばし服を受け取って、もぞもぞと着始めた。
動きが若干鈍いのは、まあ仕方ないだろう。
服を着終えると、シノはのろのろと身体を起こして衣服の乱れを整えて、ぼうっとベッドの上に座り込む。
まだ完全には目覚めていないらしい。
一度閉じた目が開けられなくなると、ゆっくり頭が沈んでいき、かくんと落ちるとはっと頭を起こす。
そして目擦り擦り、再び夢現を彷徨う。
そんな様子をしげしげと眺めていると、いつの間にかけっこうな時間が経ってしまうのだが、シカマルは大抵シノが自力で覚醒するまで黙って見ている事が多い。
シカマルは寝起きが良い方で、普段ならシノもすぐ起きる。
しかし流石に情事後の朝はきつい様だ。
「……………シカマル………」
「ん……?」
そんなシノをシカマルが眺めていると、不意にシノが真正面を向きながらシカマルを呼んだ。
何だと思って視線を移すと、シカマルは我が目を疑った。
「………サンタが来た様だな」
「………」
シノの言葉通り、そこにはちゃっかりクリスマスプレゼントが置かれているではないか。
当然、サンタクロースの正体を知らぬわけは無い。
「あの親父……」
シカマルは、苦々しげに呟いた。
年頃の息子の部屋に、しかも恋人と寝ている間に入ってくるなど、なんとデリカシーの無いことか。
「………俺のもあるのか…?」
一方シノは、興味をもったらしく、ベッドの上を這う様に移動して確かめに行っていた。
プレゼントは二つ置いてあり、一つは長方形の箱状の物で、もう一つはやけに平たい。
シノは平たい方を手に、ノートでも入っているのだろうかと呟いている。
どちらがどちらへの物かは、名前が書いてあるのですぐに判った。
シカマルもしぶしぶシノに習ってプレゼントの箱を手に取ると、テープの貼ってある箇所を探してペリペリと剥がす。
丁寧な袋の開け方は、シカマルもシノも共通している。
先に開けたシノをちらりと見遣ってから、シカマルもきれいに包装紙を外して箱を開けた。
「……………」
そして、再び蓋をする。
何が入っていたかと言えば、明らかに純正のサンタが贈ったりしない、下ネタ要素満載の小道具類一式である。
「……巫山戯んな…あのエロオヤジ……!」
何とも恥辱的なプレゼントに、静かに怒りを表したシカマルは、途端はっとして、ぱっと振り向きざまシノに言った。
「おいっ、シノ! お前何……を…」
もらったのかと言い掛けて、ん?と振り向いたシノに、シカマルがフリーズする。
シノの手には、グラビアの写真集が広げられており、ナイスバディな女性の悩殺ポーズが、シカマルの目にも飛び込んできたのだ。
「……お……おま……それ…」
「…………?」
ぱくぱくと口を開閉し酷く衝撃を受けた様なシカマルに、シノは小首を傾げた後、何やら解釈を間違えて、
「心配するな。18禁ではない」
と頷いて見せる。
当然、そういう問題ではない。
「~~~~~~」
シカマルは最早声にならない声を出して、シノからその雑誌を取り上げると、偽物サンタに抗議をするべくドカドカと部屋を出て行った。
「………」
残されたシノは、矢張り首を傾げていたが、不意に、包み紙の裏にまだ写真が一枚貼り付いていることに気が付いた。
それを捲って見たシノは、思わず口元を弛めてしまった。
そして、ガミガミと父親に罵詈雑言を浴びせるシカマルの声を階下に聞きながら、鞄の中に大事にそれを仕舞う。
これは、シカマルには見せない方がいいだろう、と判断して。
これだけは、取り上げられるわけにはいかない。
なんと言っても、秘蔵の写真。
シノは、一度仕舞ってから、少し思い直して再び取り出して見た。
そして、また口元を弛める。
なぜなら。
そこには、鹿の衣装を着せられた小さく幼いシカマルが、眠たげな目をしてぼ~っとしている、堪らなく可愛いらしい姿が写し出されていたからである。
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後書き
とうとうやっちまいました、シカシノ…。
シカシノエロスイッチが入ったようです。
クリスマスに何やってんだろう、自分…
と思いながらも、とにかくやりました。
そして、正月にも続く予定です。
(07/12/25)