※シノ(キバも?)のイメージ大崩壊。要注意です。




仮初めにも


それは、夢一夜――――。

いつものようにシノの家に遊びに来ると、シノは慣れたように俺を部屋に招き入れて、いつもの如く本を読みふけっていた。
そしていつもの如く、俺がその邪魔をする。
そんなことをしながら時間は過ぎて、そろそろ帰る時刻だとじゃれついていたシノから離れようとすると、シノが突然俺の腕を掴んだ。
「帰るのか」
と珍しく問うてくる。
いつもは、黙って玄関まで送るのに。
「ん? そうだけど…どした?」
何か用があるのかとシノの顔を覗き込んで問い返すと、シノは俺の視線を真っ直ぐ受けたまま、小さく言った。
「……泊まっていかないか………」
言ってから、不意に恥ずかしくなったように俯く。
そして掴んだ手を放して、「否、やはりいい」と言う。
そんなシノは初めてで、俺は言葉に表せない感覚が湧き起こって堪らずシノを抱き締めていた。


「―――――ぁ…!」
ピクンと身体が小さく跳ね、シノが声を洩らす。
触れるか触れないかの力加減で肌に手を這わせれば、ビクビクと震える。
「や…そこ、ダメ…!」
弱い部分を掠めると、身を捩った。
いつもはどんな敏感な部分でも衝動を堪えてしまうのに、
と違和感を抱きつつも俺はいつも以上に昇っていて、それどころじゃない。
シノから誘ったのだから、と風呂上がりに浴衣を脱がせば、シノは抵抗もなく布団に横たわった。
実は風呂場でも少し催促したのだが、その時は「ここじゃ嫌だ」と言われてしまった。
しかしよく考えればそれは寝具でなら良いということで。
深く口付けながら胸の突起を弄ると、それだけでシノは強い反応を示した。
「ん…ふ……ぅ…、んん゛っ」
ぷくりと膨らみ敏感になった突起に触れるのは、普段なら嫌がって隠してしまうのに、
今日は腕を上げてシーツを握り締め、まるで触ってと言わんばかりに前面に晒している。
「…ぁ…あ、ぅ…や…あんっ、あっ!」
どういう風の吹き回しかと思いながらも抓ったり転がしたりして、キスを終えた後に口に含めば、
未だかつて無い程甘い声で啼くものだから、吃驚して思わずシノに訊いてしまった。
「おい、シノ……お前、どうした?」
顔を覗き込んだ俺に、シノは息を乱し頬を染め涙を溜めた眼で俺を見返し、眉を寄せた。
「………こんな俺は…嫌、か…?」
「や……嫌じゃなけど…なんつーか…不気味っつーか……」
本音を零せば、むぅと口を尖らせる。
「……俺も、よく、わからない……なんだか、すごく、したくて……ん…」
しばし唇に手を当てて考えていたシノが、不意に首を傾げて呟く。
「………発情期……?」
「………」
まあ、シノも男だし…人間だし…ひいては動物なのだから、発情期があっても不思議じゃないが。
それにしても、なんとも不似合いな言葉だ。
「キバ……。嫌なら、いい。我慢する」
ぼけっとした俺に、シノが言った。
我に返った俺は、慌てて言い返す。
「いや。いやいやいや…! ぜんっぜん嫌じゃないです! 寧ろ大歓迎っす!」
再び本音を全力で零せば、シノは呆気に取られたように瞬きをしたが、すぐに嬉しそうに眼を細め微笑を浮かべた。
そして徐に手を伸ばし、俺の首に腕を回してキスしてくる。
「キバ……今夜は何でもしてやる」
そう囁かれて、もういつものシノとか違うとかなんとかどうでもよくなった。
シノの唇に唇を重ねて舌を差し込み、シノの口の中を滅茶苦茶に乱す。
それと同時に手を下へと運んでシノの中心を撫でる。
「く、ふ…………んっ…」
先走りを始めたシノを包んで上下に揺さぶれば、きゅうとしがみついてくる。
「………シノ…俺のも、やってくれる?」
この様子だと本当に何でもしてくれるかもしれない、とドキドキしながら言ってみると、シノは小さく頷いた。
子犬のように丸まって、既に立ち始めていた俺のモノを舐める。
俺をちらちら見て反応を窺う仕草なんてして、滅茶苦茶可愛い…。
「ん…キバ……気持ち良い‥?」
そんなことまで聞いてくる。
「あ、ああ…うん‥」
この時、初めてこの行為を奉仕と言う理由がわかった気がした。
「………は、ぁ…シノ…も、いい…」
一生懸命奉仕するシノに、俺の欲はどんどん昇って、耐えきれなくなると俺はシノの顎に手を添えて言った。
シノが離れると、そのまま体位を逆転させてシノの中に指を入れて解しにかかる。
「ひっ、あ、あ、ぁ、や……ぁあぅ…んっ……」
前立腺を探り当てて重点的に擦れば、シノが背を反らせて快感にのたうつ。
だんだん緩くなり2本3本と指を増やせば、更に反応は強くなった。
「あっ、あっ、あンっ、あっ!……ふぁ…やぁ…」
最後の念入れと指を抜いて顔を埋めて舌を差し込めば、流石に恥ずかしいのか今夜初めての抵抗を見せる。
しかしそれもほんの少しで、すぐに止めた。
「んっ……キ、バぁ…も…」
解し終える頃合を見計らってか、シノが掠れる声で催促する。
そんなことも初めてで、一瞬理性が切れそうになるのをなんとか堪えて顔を上げた。
上体を起こしたシノと視線がかち合い、合わせたままゆっくりと次に移ろうとしたその時、シノが俺の肩を押さえる。
催促しといて待ったかよと思った矢先、シノが言った言葉に俺は目を丸くした。
「俺が、やる」
「…………へ…?」
ぽかんとした俺に、シノが再び繰り返す。
「俺がやる、と言った」
「それは…何…えっと……あれか…? 騎乗とか、それ系のヤツ…?」
俺が狼狽えて言うと、詳しくないシノは「多分」と返してきた。
いくらなんでもそれは、見たいような見たくないような複雑な気分になる。
それでもしたいと言うものを拒むのも男が廃るというもので…。
否、それよりなにより。
と、俺はシノの額に自分の額を押し当て今更ながら熱を測った。
少々熱いが、それは行為のせいだろう。熱は無いようだ。
「キバ…」
「あ。う…わり…つい…」
シノが何だというように言うので、俺は慌てて顔を離す。
するとそこにはこの上なく妖艶できれいで可愛い顔があって…。
「どっちでも、いいから、はやく…しろ……。俺…もう…」
限界…と告げてもどかしそうに腰を動かすシノに、俺の理性が途端にぷつんとキレた。
したいと言うならさせてやると、上に乗せれば、シノは自ら俺のモノを入れ始める。
「ン……っ」
これが本当にシノかと疑う程淫乱な姿だが、しかしだからこそ堪らない。
「ぁ…ぅ、く…は、ぁ、はあ…」
何とか収めたシノが、俺の上で荒く息をつく。
「シノ…動けるか…?」
こちらもそろそろ限界で、促すように言えば、シノはこくと小さく頷いて、腰を浮かせた。
「ぁ…あっ、あっ、ん…ふ、っあ!」
「―――――クッ…」
シノの動きに俺も合わせて動かせば、シノは体を反らせて喘ぐ。
「ああっ! だ、め…や……ぁ…は、あぁん!!」
「―――――――っ」
意識が遠のく。
互いのグチャグチャになる音とシノの声が耳の奥に響いて、その余韻も薄れていく。
薄れて、薄れて、薄れて、ぼやけていた視界がいきなりぱっと開けた。
「は………あ…?」
荒く息をついて、ぐちゃぐちゃになった布団を握り締めている自分が、現実なんだかそうでないのかわからなかったが、しばらく経つと現実だとはっきりしてきた。
「夢………か…。そう、か……良かっ…」
ん……? 夢?
…………………夢?!

「あああああああっ!!! 俺、何で起きちまったんだあぁぁ!!!」

俺の馬っ鹿野郎~~~~!!!!

夢で良かったと思う反面、夢ならば、最後までやってから目覚めろと、深く深く自分を呪ったキバであった。





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後書き
夢オチです。
ごめんなさい…………。
馬鹿なのはキバでなくて、私です…………。











(07/6/3)