心の中で

「あっ……ぁ………」
ああ、なんて可愛いんだろう…。
「シノ……」
いつもは高い襟に隠されてほとんど開かれない口。
たまに開いたかと思えば、発せられる言葉は、どんな時も冷静で、嫌味な正論で、偉そうな忠告で、煩わしい小言で。
その口が、今は惜しげもなく晒されて、開かれて。
自分の所作を感じて熱に浮かされたように甘い声を洩らしている。
「あ…! そこ………や…っ」
弱いところを攻めてやれば、ピクンと身体を反応させて身を捩る。
普段、だぼだぼの服を着て、手さえもポケットの中で。
その、陽に晒したことなどないと思われるほど透き通った白い素肌は、きっと女子に嫉妬されるだろう。
その上、戦闘方法のためか、その身体は思いの外細い。
しっかり筋肉はついてはいるが、それでも他の連中と比べて細くてしなやかだ。
それに、長い。この長身はちょっとムカつく。
「シノってさ、名前もそうだけど、女みてぇな身体だよな」
そう言えば、「俺は男だ」と返ってきて。
それから、「お前は女の身体を知ってるのか?」と少々不安げに聞いてくる。
ああ、くそっ。だから何でそんな、可愛いんだって!
「知らねぇよ。俺にはシノだけだ…」
そう、耳元で囁いてやれば、顔を真っ赤にして、照れ隠しに眉を寄せてぷいっとそっぽを向く。
あああ、堪んねぇ!!
「ふあ…! き、キバ!?」
俺が可愛さのあまり髪をがむしゃらに撫でると、何事かと驚く。
額あてで留められて立っている髪は、おろされればけっこう長い。
黒くてちょっとくせっ毛で、硬めの髪の毛。さらさらなのも良いけど、こういう感触も悪くない。
…てか、シノなら何でも良い。
そして、何よりも俺を惹きつけるのは、こいつの、眼。
驚いて見開かれ露わになったのは、虫使いに相応しい、琥珀色の眼。
「シノの眼、本当にきれいだよなぁ…。グラサンかけてんの、もったいねぇ」
「……油女の血を引く者は皆同じだ。それに、サングラスが無ければ強い光に耐えられない。かけないわけにはいかない」
眼を食い入るように見つめて言うと、その視線を真っ直ぐ見つめ返しながらシノが淡々と応えた。
「…そうだよな、やっぱ必要だよな。うん。でも、ま、お陰で俺が独り占めにできるから。それでいいか」
そう言って、瞼の上に唇を落とす。
離れてみると、また顔を赤くして、こちらを睨んでいた。
「やっぱ、可愛い…」
心の中で何度も思ったことを口に出すと、余計に可愛く思えて。もう我慢できなくなった。
「うあっ……!」
突然盛った俺に、シノが声をあげる。
「あっ……ン! ま…っ、やめ……」
「まてねー。やめねー。もう無理」
押してくる手をつかんで布団に押しつけ、シノの頼みをきっぱり断って、腰を動かす。
「ん、ふ…っ、あっ、あっ、あっ……!!」
堪え難い快楽に取り乱すシノは、日常とは全くの別人だ。そのギャップが、堪らない。
あの、無口無愛想無表情無感動、尊大な態度で子供らしさの欠片もない奴が、俺の腕の中でその全てを剥ぎ取って、頼りなく俺の為すがままになっている。
その姿が、まるで蛹の中のなりきっていない蝶のようで。
そして、その蝶の姿を知っているのは自分だけなのだと思うと、無性に気持ちが高揚する。
「…っ…キ…バ…ァ…!!」
「シノ――――っ!」
「あっ……ぁあアアアアッ!!」
「―――――っ!!」
シノが達すると、少し遅れて俺の欲もシノの中で吐き出された。
溢れた精液が、シーツとシノの脚を汚す。
はあはあと息を整えていると、シノの非難の声がぼそりと聞こえてきた。
「もう少し、予備動作を、入れろ…。お前のタイミングは、わからない……」
はい…と心の中で反省しつつ、心地良いシノの胸に、顔をうめた。





――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

後書き
昔書いた物。
何考えてたんだか…と呆れるも、
今もあんまり変わっていないじゃんと思い……。
きっとこれからもあんまり変わらないんだろうなぁ…と思い……。
ちょっぴり落ち込みましたが、いいさいいさと小石を蹴って。
このまま突き進んでやりますともさ!
と開き直って、アップしました。











(07/11/20)