おまけ
「…………んぅ…ぐ……」
軽い口吻のつもりが強く吸い付いてきたキバを、シノは渾身の力を込めて引き剥がした。
「っもう、終いだ。虫達も寝静まっている。だから俺は寝る」
「何いってんだよ。まだまだ宵の口。秋の夜はこれからじゃねーか」
「……って、どこを触ってる…!」
「月の連中に、俺等の愛の深さを見せつけてやろうぜ?」
「馬鹿かおまえは」
「見られてると恥ずかしいって?」
「ふ…巫山戯るな!」
「あのな…」
顔を真っ赤にしてばしゃばしゃと湯の中で抗うシノをあしらいながら、キバはシノの言葉に呆れた声をあげた。
その声にシノが一瞬動きを止めキバを振り向くと、ずいと顔を寄せて強い意志を帯びた眼で睨み付ける。
「巫山戯てなんかねーよ。俺は、いつだって本気だ」
その鋭い視線に射抜かれて、シノは息を呑んだ。
精神が一気に奪われ、身体も金縛りにあったように動かなくなる。
こうなると、最早されるがままだ。
キバの力強い抱擁に目眩を覚え、巧な愛撫に翻弄される中、シノはもう一つの誓いを宣言した。
「……その手に乗るのは、今夜限りだからな………!」