□憎くて仕方無い、彼のコト。
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(ああ、
まただ。
また、あいつのせいで…)



今日のシノはいつも以上に不機嫌だった。
最近、シカマルがよく自分に話しかけてくること。
それがすごく嫌だった。苛ついた。
シノはシカマルが好きじゃなかった。
シカマルはキバの想い人。
シカマルがシノに話しかけてくればくるほど、キバはシノを疎んだ。
いい迷惑だった。
シノはシカマルが何を考えてこんな行動をしているのか分からない。
考えれば考えるほど、自分に嫌がらせしているようにしか思えなかった。
シカマルは自分をキバから遠ざけているようにしか思えなかった。
シノはそう思えば思うほど、シカマルを憎んだ。嫉妬した。

(まただ。また、あいつのせいで…)


「シノ」
聞き覚えのある声が聞こえた。
振り向きはしなかった。
その声の主は『あいつ』だと分かっていたから。
「シノー?どした?」
全然反応しないシノが気になったのか、声の主はシノに駆け寄る。


(ああ、
来るな。
またキバに疎まれる…。
おまえのせいで…)


憎かった。
自分の大切な人の心を独り占めする彼が。
羨ましかった。
自分を大切な人から遠ざける彼が。
憎くて仕方無い。


「シノ?」
ふと気づけば、目の前にシカマルがいた。
驚いたが、それを隠す。

「…何だ」
「いやさっきよー、ナルトが…」
シカマルは楽しそうに話した。だがシノがいつも以上に不機嫌なのに気づき、不安そうに聞いた。
「…どうした?俺の話つまんねぇか?」
「………………に」


(知っているくせに)


「?」
言おうとした言葉は喉に詰まって出てこなかった。
「…帰る」
「えっ…、お、おいっ!」
いきなり立ち去ろうとしだすシノをシカマルは止めた。
シノの顔を見れば、サングラスをかけていても分かるくらい不機嫌な顔。
「シノ…、俺何かしたか…」


(知っているくせに。
俺の想いも、キバの想いも…)


「…知っているくせに…」
「………ぇ?」


「何もかも知っているくせに、知らないふりなんてするな…」
シノの声が震える。
声だけではなく、握りしめた拳も震えていた。
その震えが怒りのものなのか、悲しみのものなのか、シノ自身も分からなかった。



「もう俺に話しかけ…」

震える唇から出た言葉はシカマルの唇で消えた。

キスだと気づいたのは一秒後。さらにシカマルに抱かれていると気づいたのはその二秒後。
「ーーーっ!?」
なんとか逃げようと試みたがどうしてもその腕から抜け出せず、さらにキスは深くなっていく。
「っ、ゃ、だっ」
無理矢理唇を離し、否定の言葉を出す。今のシノにはそれが精一杯だった。
前を見ればいつもと違う真剣な顔のシカマルがいた。
「…意味分かんねぇ。そんなことで俺が諦めるかと思ったかよ」
その声が少し怖かった。
「俺、以外と独占欲強いからさ。そこら辺覚悟しとけよ?」


…彼は、
彼の考えていたことは、
全く違うことだった。

(…ああ。
きっと明日からはもっとキバから遠ざかってしまうのか)
結局どんどんキバから離れていくのには変わらなかった。
(…羨ましい)
シカマルに抱く嫉妬心も変わらない。

変わるのはただ一つだけ。

シカマルの想いが分かってしまい、自分がもっと辛くなること。ただそれだけ。


(…キバ)
心の中で自分の想い人を想う。
きっとこの想いは伝えられないだろう。
そんな気がした。


(…明日からどうすればいい?)
問いかけても答える者はいない。




END.

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リンクさせて頂きました『裏庭の南蛮煙管』の海月様より、相互記念として頂いてしまいました…!
私がリクエストしたのは、『キバシカシノ(キバ→シカ→シノ→キバの四角関係)』ですが、正式にはそれプラス、

『シノはキバが好きなのにキバはシカマルが好きで、でもシカマルはシノと仲良くしようとするからシノはキバに疎(うと)まれて。
だからシカマルに嫉妬や苛立ちを抱くシノ』

…でした。
こんな長いリクエストをするなんて、なんて迷惑!
(私的なことですが、何だか事ある毎にリクエストが長くなっている気がします。そしてそれは多分、気のせいじゃない)
でも。
でもですね。
私がシノとシカマルを書くと、基本的に仲良しになってしまうんですよ!
だから『シカマルに嫉妬するシノ』を読んでみたかったんですよ!

そうしたら、こんな小説を頂けたんですよ―――!!
こんなハチャメチャなお願いに、応えていただけただけでも有り難いのに!
キバと、シノと、シカマルの関係性が、まごうことなき四角関係!
すごいですよ。
三角関係どころか、四角関係ですよ?
シカマルとシノの心の擦れ違いや、想いの矛先の違い。
キバの、想い人であるシカマルの、心を独占するシノへの嫉み。
またそれと同じように、シノの、大切な想い人であるキバの、
心の中にいるシカマルに対するシノの憎しみや羨望。
そして、近付きたいと想っている人に、疎まれる辛さ。
これぞ四角関係(三角関係)の醍醐味ですよ…!(グッ)

更に、一方通行な想いに悩んでいるところへ、
嫌で、憎くて仕方なかった奴が、自分に一方通行な想いを抱いていると知ってしまう。
コイツも自分と同じだったのだと、わかってしまう…!
なんてドラマチックな展開っ!
しかし、なんといっても一番の見所は、

シカマルとシノのキスシーンでしょう!

突然のシカマルのキスに、ビックリしてしまいましたワタクシ。そしてテンション急激上昇!
(さらにそのままおしたおしちゃえとかおもってしまうワタシがここにいる)
不意に真剣な顔するのって、反則ですよね。しかも、

「俺、以外と独占欲強いからさ。そこら辺覚悟しとけよ?」

ですって―――!!
ひゃああああ!!! シカ攻めだ!!
私が書くと、独占欲強いのも覚悟させるのもシノになってしまいますが、
そうですよ! 思い出した!
私、独占欲強い亭主関白的なシカマル、好きなんです…!
(なのにどんどんヘタレになっていくのは、シノが強すぎるからだ)
シカマル攻めのシカシノ(ん?)、書きたいなぁ…。。

そしてそして、シカマルに攻め寄られ、悩みの種が増えてしまったシノ。
恋愛関係は、出口の見えない迷宮(ラビリンス)ですからね!
どうするのかは、自分で答えを出すしかない。
どうなるのかは、神のみぞ知る。
シノには幸せになってほしいけど…。
キバにもシカマルにも幸せになってもらいたい。
でもそれはかなり無理な話で……切なくなります。。

……………。

え~…長々と感想を語ってしまい、すみませんでした…(汗々)


海月様!

確かに、有り難く拝受致しました!!
無理難題に応えてくださり、そして素敵な小説をくださって、

誠にありがとうございました!!!


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――――と、先日、かなりのハイテンションでアップしたのですが、その後。その日の午後に。私はフッと気付きました。


(あれ…これってもしかして、四角関係じゃなくて三角関係なんじゃ………


・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・。

ですよね? ですよねっ? そうですよねっっ??

わ…私本当に、リクエストの段階から勘違いしておりまして……っ!(汗々)
四角関係と、本気で思い込んでおりました――――っっ!!(滝汗)


よって恥ずかしながら、ここに訂正とお詫びをさせていただきます!!!(T 0 T)


大変、失礼致しました!!


そして海月様!

ハイテンションにボケたリクに応えてくださり、誠にありがとうございましたっ!!!(平伏)