Chocolate Kiss




シノが珍しく家に遊びに来ないか、と誘ってきた。俺は何だろうと期待を膨らませていたが。

「…チョコ…レート…」

家に上がった瞬間、甘いチョコレートの匂いがした。

「…シノ、何やってんだ…?」
「チョコケーキ作りに挑戦している。手伝え」
「…それってやっぱ」
「やらないぞ」

予想通り。シノは俺がこういうの(菓子作り)が上手いのを知ってケーキ作りを手伝わせる気のようだ。しかもそれを食べさせてくれないときた。メンドクセェ。でも。

「はぁ…、手伝えばいいんだろ?」

断れないのが惚れた弱み…という奴かな。



「そーそー、湯に浸からないようにボールを持って。全部溶けたら絞り袋に入れるぞ」
「…ん、こう…か?」

ぎこちない動きだが、なかなか器用なシノは俺の指示通りにこなしていく。ボールの中のチョコは生クリームと混ざって溶けていた。
そろそろか、と思い、絞り袋を取り出した。

「…じゃあ、そろそろこの中にチョコを…。あ、こぼれないようにな」
「分かっている…」

ゆっくりと絞り袋の中にチョコが入れられ、重みが増す。ボールの3分の1を入れたら、上を紐で縛った。

「…で、残った奴はスポンジに塗ると」


俺が来る前にスポンジを作っていたらしく、目の前には綺麗に作られたそれが置いてある。それにボールの中のチョコを塗りたくっていった。
塗り終わった後、ボールの中にはほんの僅かだけチョコが残った。

「おい、ちょっと残ってる」
「ん…? ああ、本当だな」

シノはそれを計量スプーンですくうと、俺の口の中に入れた。

「!!」
「食べたかったのだろう?それくらいはやる」
「…ん、サンキュ…」

まさか貰えるとは思ってなかった。戸惑いながらも礼を言う。口の中は甘いチョコの味が広がっていた。
その時、ふと思い出す。

(あ…、今日バレンタインデー…)

それを思い出した瞬間、まさか、と思う。

(考え過ぎか…? いや、でも…。もしかして…

これ、バレンタインチョコのつもりか…?)

計量スプーン一杯のバレンタインチョコ。あえて今作っているチョコケーキじゃないのがとてもシノらしい。照れ隠しのつもりだろうか。

「っぷ、くく…。シノ、お前マジ可愛い」
「っ…。何だいきなり」

今一瞬シノが動揺したのを俺は見逃さない。どうやら俺の考えは当たっていたようだ。

嗚呼、本当、シノは可愛い。


「くれるならそっちのでかい方が良いんだけど。愛情こもってそうだし」
「…馬鹿。やらないと言ったはずだ」
「冗談。貰えないのは目に見えてるからこの一口チョコだけで十分だ」

俺は少し笑っていった。シノの顔が少し赤いのはきっと気のせいじゃない。

「シノ」

名前を呼ぶ。シノはゆっくりこちらの方を向いた。その白い頬に触れ、引き寄せた。
シノの柔らかい唇の感触がした。俺の口の中にはまだチョコの味がしていて、きっとその味はシノも感じているだろうな。






                                                                   END



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甘~いシカシノバレンタインっ!!
『裏庭の南蛮煙管』様よりフリーのお言葉に甘えて頂いてきました!
あえてケーキ本体ではなく、計量スプーン一杯のチョコに愛を込めるシノ!
さっすが! 分かり難い!(笑)
しかしそれでも、どんなにさり気なく装い隠したって、シカマルには分かってしまうのさ!(> <)!
海月様、毎度どうもありがとうございますww
いいな~シカマル、シノにあ~んされて。
ケーキ本体は誰が食べるのでしょうか。
シノがお父さんにあげて、で、二人で一緒に食べてたら…いいなぁ。。