頂き物
「……シカマル…?どう、した?」
嗚呼。何故、今このような状況になってしまっているんだろう…。
シカマルは今自分を上目遣いで見つめるシノを見て、ため息をついた。
それは今から一時間前に遡る。
「あ~あ、やっぱみんな忙しいのね~」
いのは頬杖をつき、ため息をついた。
今日はひな祭り、女の子たちのお祭りである。ヒナタが皆を日向家に呼んだのだが、なかなか全員が集まることができなかった。
「あ~あ、ネジやリーやガイ先生は任務で居ないしっ!」
「ヤマト隊長も来れなくなったしっ!」
「アスマ先生も来ないわよ~!もう、みんな忙しすぎよ!!」
はあああ…、とため息をつくテンテン、サクラ、いの。そんな三人を見ておどおどしだすヒナタ。
「やや、やっぱみんな忙しいんだよね…」
結局来れたのは…
「サクラちゃんたち、落ち込まないでほしいってばよ~…」
「そんなに落ち込むとさらにブ…。いえ、何でも?」
「ま!これだけ集まれただけ良しとしよーよ?」
「女子全員居るだけいーだろが…」
「はむはむ…」
「そうそう落ち込むなよ!折角のひな祭りなんだしよっ!」
「…確かにな…」
ナルト、サイ、カカシ、シカマル、チョウジ、キバ、シノだった。
そんな男性陣の言葉を聞いたサクラは嘆きだす。
「確かにみんなの言うとおりよっ!でもさあっ…、やっぱもっと沢山いたほうが楽しいでしょ!」
「私の班なんて誰一人来てないのよ!?」
ついにはテンテンも乗り出した。確かに、テンテンの班の人はこの場に誰も居ない。
「ヒナタや紅先生は良いよね…、ちゃんと班員集まってるから…」
「あっ…、え!?そそ、その…」
「いの!八つ当たりはダメよ?」
はああ~、とため息をつく三名。やはり自分の班が揃わないのは相当ショックなのだろう。かなりの落ち込みぶりである。
そんな三人を励ますべく、男性陣は慌てて気を紛らわせる。
「あ、あー、ヒナタ!雛霰あるってばよ!?」
「ええっ、う、うん」
「そそ、そーだ菱餅!シノ、取ってくれ!」
「…ん」
「ほ、ほらっ!甘酒!みんなで一緒にのもーよ」
「そうよ!ね、乾杯しましょ?」
必死にひな祭りでお決まりの食べ物などを取り出していく彼らは少し滑稽にも見える。
そんなやりとりを見た三人は少し立ち直った。
「…そうね、やっぱ楽しまなくちゃ!」
ほっ、とみんな安心したため息をついた。
「じゃあ甘酒ね。はい、どーぞ」
「甘酒…?」
甘酒という言葉にシノが反応した。そして渡された甘酒をじっと見つめる。少し匂いを嗅いでみたが、酒の臭いなどしなかった。
そんな動作をするシノを見て、キバは問う。
「もしかしてシノ、甘酒飲んだことねーのか?」
「……ああ…」
まだ不思議そうな顔をして甘酒を見つめるシノ。初めて見る謎の飲み物に興味と不安を寄せているようだ。
「大丈夫だよ、甘酒はほぼアルコールが入ってないらしいから」
「ああ、シノも安心して飲んで良いぞ」
まだ少しそれを飲むのを抵抗しているシノにサイとシカマルが優しく言う。それに安心し、シノは甘酒を飲む。
かしゃんっ
シノの持っていたコップが手から滑り落ちた。
「し…、シノ?どうした?」
隣にいたシカマルは動かないシノの肩を揺さぶった。その時。
「…ん、シカマルー…。熱、い…」
シノの頬が赤く紅潮していた。
つまり、酔っていた。
そして冒頭に至る。
どうやらシノはアルコールが微量しか入っていない甘酒でも酔ってしまうほど酒に弱い体質らしい。
一度シノが酔ったところを見たことのある悪ガキ四人にその時の記憶が蘇る。
とにかく酔ったシノはいろんな意味で危険だ。誰彼構わず誘い始める(アレ的な意味で)。
そんなシノに絡まれたら最後、理性なんてすぐに吹っ飛ぶ。
「…シカマル、こっち、向いて…」
「むむ、無理無理無理。理性が保てねー…」
シノの標的となったシカマルはとにかく顔を反らす。シノの方を向いたら絶対に駄目だ、と思い、目も瞑る。
「…シノ?どうかしたんですか?」
明らかに態度が一変したシノを不安がったサイが、シノの肩を叩く。するとシノはシカマルから離れ、サイにくっつき始めた。
「さ、サイっ!極力顔は見るなってばよ!!」
「顔?顔が何かー…」
「あー!バカー!!」
ナルトの必死の制止も虚しく、サイはシノの顔を見てしまった。
紅潮した頬が妙に艶やかで、トロンとした、潤んだ瞳でサイを見つめるシノ。その時、プツ、と何かが切れる音がした。
「っシノ…!」
「…っ、サイ、ゃ」
「ささささささサイっ!?何してんのよー!!」
いきなりシノを押し倒すサイ。それを見たサクラはサイを指さして叫ぶ。
だがサイはそんなもの目に見えていないかのように、シノの腕をしっかりと押さえつけ顔を近づけた。
「ちょっとサイ、何やろうとしてるのー!」
駄目でしょーよ、とカカシが止めにはいる。そしてその隙にナルトがサイをシノから引き剥がした。
「だから見るなっていったのに!!」
「あ…、ナルト…。ごめん…」
正気に戻ったのかサイは素直に謝った。しかしまだまだシノの暴走は続く。次の標的をカカシに定めた。
「カカシせんせっ…、俺…」
「カカシ先生、見ちゃ駄目です!」
「分かってるよー!」
チョウジの言葉通りシノを見ないように顔を反らす。しかしさすがシノ、ついに反則技を使いだした。
「はぁ…、カカシ先、生…っぁ…」
(わーわーわーわー!!顔近いっ…!!)
女子たちがキャー!と叫び始める。シノはカカシの間近まで迫り、顔のすぐ近くで甘い声を出す。視覚が駄目なら聴覚でと来た。
いきなりの出来事に皆反応できなかった。
そしてついにカカシも理性が切れる。
「もも、もう無理だよーっ!!」
「キャーカカシ先生ーー!!」
カカシがシノをぎゅっと抱きしめ、押し倒そうとしたときだった。
がらっ
襖が開く。
「おーおー…、何か派手にやってるなぁお前等…」
「っアスマ…!?」
「アスマ先生ー!!」
確かに来れなかったはずのアスマが、襖を開けて登場する。
最初は騒がしい部屋の中を見回していたが、カカシに押し倒されているシノを見た瞬間、動きが止まった。
「シノ、お前また酔ってんのかよ!」
あちゃ~、と頭を抱えるアスマ。仕方なくカカシからシノを奪う。
「はぁ…、シノ。ほら、行くぞ」
「あ…、んっ、アス、マ…」
シノをお姫様だっこしてアスマは部屋を後にした。
「…持ってかれたな」
「…おお」
キバがぽつりと呟き、その後全員が大きなため息をついた。今全員思っていることは唯一つ。
(シノいろんな意味で危ない…!)
これからはシノに酒を飲ませてはいけない、と強く思う全員だった。
帰り道。
腕の中でこちらを見つめるシノ。その瞳は妖しく潤み、相手を魅了する。そんなシノを見て、アスマはため息をついた。
「ったく…、お前は誰彼構わず誘いすぎだ…」
特に今回は…、と呟きそっとシノの頬を撫でる。白い頬は紅潮していて、何とも言えない色気を発していた。
シノはアスマの首に腕を絡め、頬に軽くキスをした。
「…アスマ」
「ん?」
「……遅い…、馬鹿…」
「悪いな、いきなり任務入ってきたもんだからよ…。これでもかなり急いだ方だぞ?」
酔ったシノにアスマは触れるだけのキスをした。よく機嫌が悪くなるシノにこれは効果的だった。のだが、今は全く効果無しで、さらに機嫌を悪くした。
「……いつか浮気してしまうぞ…?」
ぽつりと呟いた言葉。その中に隠れていたのはシノの本音。やはりシノもアスマが居なかったことが悲しかったのだ。表情には出さなかったが。
(…嗚呼、そういうわけか)
「…ごめんな、シノ…」
「…っん、ん」
軽いキスではなく、深く、熱い口づけ。二人の口の中に甘い味が広がって消えた。
唇を離せば、二人の唇を繋ぐ銀色の糸。
「今日はたっぷり愛してやるよ」
「……ん」
道に誰も居なくてよかったと思う。アスマは酔ったシノを抱きかかえながら、自宅へと向かうのだった。
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雛祭りリク!! 諸手を挙げて持ち帰って参りました!!
…っていうか
シノがお持ち帰りされてるよ!?!
うわーうわー! アスマがシノをテイクアウト!
うわー!! 甘いあっま~い裏のアスシノが書き(読み)たくなりますね! ねっ!
そして酔っ払ったシノは色んな意味で要注意!
なにこの総受けならぬ超・総誘い受けは!
なんだあの視覚がダメなら聴覚で…って新必殺技は!!
しかもシカサイカカシを取っ替え引っ替え――っ!! 魔性シノ怖ぇ~www(←でも大好き 笑)
一目見たら…って、メデゥーサ的チャーム使いですね! それも超強力な!
前に画像検索で『寄壊虫 シノ』でググッた時、『マジカル男子シノ』なるものが出て来たんですが、その比じゃないですね!
シノは超魔性男子だったんですね!(笑)
しかし私的には不思議そうに謎の飲み物見つめるシノだけでも、十分天然のお誘いだと思いますよ。。
それにしてもシノ、女の子の前でソンナコトっ! サイもカカシ先生も、ナニする気ですか!(もうっ)
暴走する魔性っ子(と私)。そこに遅れて登場、アスマ先生。
その余裕な態度が憎いですねw
っていうか「また酔ってんのか」って……シノの酔い癖知ってるんだ(へぇ~)
シノの魅惑の目を見ても理性保てるほど見慣れてるんだ(ほぉ~)
シノにとってアルコールが媚薬になるってこと知ってるんだ(ふふ~ん)
そして極め台詞が「今日はたっぷり愛して…」(エヘヘヘヘh←大丈夫。私は正常。。)
海月様! シノの甘く激しい酔いっぷりをありがとうございました!! 御馳走になりました!w