羨望と失楽と
わあわあきゃっきゃとはしゃぐ声。
駆け足、手叩き、おしゃべり、笑い。
そうしたものに覚えるのは、気持ちの良さと心地の悪さ。
ふと目を開けて見れば、木陰の先、太陽の下で楽しそうに自分と同じアカデミーの生徒達が遊んでいる。
それぞれのグループを作り、遊戯と話題を共有し、笑顔を倍増させていく。
その良いことが、嫌だと思うのは、その輪に入らない自分の性と、仲間になれない歯がゆさと…。
その遠い場所へ、駆け込んでいく独りのこども。
仲間に入れぬ問題児。
仲間外れにされ、ぽつんと独り残されたナルトが、こちらを振り向いた拍子にオレと目を合わせる。
木陰で独り、休んでいるオレと目が合って、ナルトは一瞬ギクリとしたような顔をして――アッカンベーと舌を出した。
お前とは違うのだと言うように。
そしてナルトは、逃げるように駆けていく。
太陽の下を、光の中を。
輪の中へ、仲間の中へ。
そう、きっと、オレとは違う。
追い駆け続け、手を伸ばし続けるお前と、諦観しているオレとは違う。
「………」
目を閉じれば風に擦れる葉のさざめきと、揺れる風光に包まれる。
人が楽しむ音よりも、喜ぶ、笑顔よりも、ずっとずっと心地良い。
何故、人などに生まれたのだろう。
何故、人間なのだろう。
こんなにも空しく 苦しく 恨めしいのに―――。
*
「ナ…ナルトくん!」
そんな声に目が覚める。
サラサラと鳴る葉の音と揺れる木陰は、今度は、夢ではないらしい。
顔を上げれば木陰の先で、太陽の下、ナルト達とヒナタが一緒にいるのが見て取れた。
わずかに頬を染め、ヒナタがナルトに話しかけている。
サクラが苦笑を漏らし、サイが不思議そうな顔をして、シカマルやいのやチョウジまで光の中に立っている。
追い駆け続け、求め続けたナルトは、その中心で笑っている。
それはとても眩しくて、気持ちの良い光景で。
そしてとても……心地悪い。
自分には無いものに焦がれる羨望と
共に楽しむことのできぬ失楽と
仲間に入りたい…という拙なる希望‥
「おい、シノ」
名を呼ばれ
「何やってんだ。俺らも行くぞ」
キバが木陰の外へと歩いて出て行く。
赤丸がその後に続き、その白い毛が太陽の光に眩しくきらめく。
「………」
自分も、入れてくれるのか―――。
「おい、シノ!」
怒鳴るキバに皆がこちらを向く。
オレが知って、オレを知っている、仲間達が…。
「ああ…」
―――自分も仲間に。
―――光の、中に…。
羨望と失楽と、拙なる希望。
抱き続けた先は、こんなにもすぐ傍にあって。
ただ起き上がり、歩を進め、そちらに向かえば。
心地の良い光が 満ちていた…。
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あとがき
なんだかセキララ!(笑)
女々しくしてごめんよシノ。そして皆様。
お読みくださりありがとうございました!