「バレンタインといやぁ……」
将棋盤を挟みアスマと対局していたシノは、思い出したような呟きに顔を上げた。
「昔、マジでハート型のチョコを貰ったことがあってな」
「………ほぅ…」
「そんで、家に帰って早速開けて見たらよ」
「………」
「真っ二つに割れてて、ちょっと凹んだ……」
「……まあ、形状的に割れやすいですからね」

そんな事を言いながら、ぱちんと駒を打つ。

「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………で…」

話が途切れ、暫くはまた無言で打ち合っていたが、ふいにシノが口を開いた。
「欲しいんですか？ …チョコ」
ぱちっ。
「………べつに」
何食わぬ顔で言うアスマ。
だが。
「ブラックとホワイトでは」
「ブラック」
シノの二択には間髪入れずに即答した。
「…………」
ふむ、と盤を睨み考える仕草をしてから、一つ頷くシノ。
「ビターの黒いハートでいかがですか」
「あ？」
「今度は割れないように…」
「あぁ…」
成る程、と納得したアスマだったが、次の思わぬシノの手にうっと詰まった。
「では、ホワイトデーは１００倍返しということで手を打ちましょう」
「………」
う゛～ん、と顎に手を当てて顔を顰める。


「…………ビター過ぎだろ、そりゃ…」
アスマは、苦い顔で唸った。








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あとがき












（08/2/14）