「さるかに合戦の猿ってよ、悪知恵が働くみてぇだけど、案外バカだよな」
「…………?」


   柿


シカマルがシノの家にやって来たのは、ちょうどおやつの頃合だった。
お裾分けだと持ってきたのは、熟れて綺麗な朱色に染まった柿一籠。
チョウジからのお裾分けで、シノにもあげてほしいと頼まれたらしい。
ついでだからと家にあがり、設置したばかりのコタツに入って二人で柿を食す。
そんな時に、ぽろりとシカマルが言ったのが、「さるかに合戦」の話だった。

「…………突然、何だ」
「いや…、来る途中なんとなく思っただけなんだけどさ。ほら、猿と蟹が柿の種とおむすびを交換するじゃねぇか」
「……ああ」
「で、柿の木が育って実ると、それを猿が横取りするわけだ」
「……ああ」
「でもよ。そんなことすりゃあ、次の年から柿が手に入らなくなるだろ? だって柿の木自体は蟹の家にあるんだから」
「…………」
「後々の事を考えれば、そんな強硬手段を取るより、蟹と親しくなってお裾分けでももらう方がぜってー得だろ」
「…………」
「せっかく柿の種で相手の好感を得たんだからよ。それをふいにしちまうのは、勿体ねぇと思わねぇか?」

「…………」
「…………」

シノは、果物ナイフで一通り柿の皮を剥き終えると、無言で一口大の大きさに切り分けてテーブルの真ん中へと皿を押し出す。
そんなシノの一連の行動を、こちらも無言で眺めるシカマル。
カチンと小さな音を立てて、剥いた皮の方の皿に果物ナイフを置くと、漸くシノが口を開いた。

「……俺が思うのは、だた一つ」
「………ん?」
「その話は、チョウジにはあまりしない方が良いという事だ」
「……ぁあ…??」





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あとがき
の秋企画第3弾は、超短いシカシノ。
今回は「実りの秋」です。
さるかに合戦についてシカマルが思った事は、私がふと思った事で御座います。
………ふとね、ふっと。
そんな下心を持って友達と長い付き合いをするような、ドス黒い腹を持っているわけではありません…。きっと。
シカマルも、別にそんなつもりでチョウジと仲良くなったわけでも、話をしたわけでも無いんですが…。
「柿のお裾分け」という状況が酷似しているので、チョウジには言わない方が良いと、シノは思ったわけです。
私も、止めた方が良いと思います。
コタツには柿より蜜柑の方が合う気がしますが、その組合せはお正月に取っておきましょう。
それにしてもこの二人。
本当に渋い構図がよく似合う…。












(07/12/4)