※ゲスト出演:自来也。内容は激甘なイチャイチャ噺。




イチャイチャ・パラダイス

「おい、そこの若いの!!」
「…………!?」
演習が延びたため、約束の時間におくれてシノがカカシの家へ向かっていると、突然頭上から声を掛けられた。
なんだと見上げた途端、もの凄い振動と共に巨大なカエルが目の前に着地した。
一瞬驚いたもののすぐに冷静になる。と、ボンッとカエルも姿を消し、一人の見知った人物が姿を現した。
「…………自来也様」
それは、伝説の三忍の一人、蝦蟇仙人こと自来也。個人的には知り合いでもないが、ナルトの師匠として顔と名前は知っていた。
「よお。お前は、たしかナルトと同期の……」
「油女シノです」
「おお! そうだそうだ! 油女!!」
豪快に名前を確認する自来也に、シノは僅かに眉間に皺を寄せた。この人が、自分に一体何の用だろう……と。
「何か、御用ですか?」
「ん…? ああ、そうだった! 油女…いや、シノ。ナルトを見んかったか?」
「ナルト……? いえ。見ていません」
「おっかしーのー。確かにこっちに来たはずなんだが…あいつめぇ、何処行きおった」
自来也がナルトを探しているのだとわかると、シノは納得したが微かに首を傾げる。
「ナルトが何か?」
「わしの大事な取材道具を持ったまま逃げおった!」
取材…とは名ばかりの覗きだが、シノはそんなことを知るはずもなく、素直に取材の道具だと認識した。
そして、自来也が今は小説家だということ思い出す。カカシがよく読んでいる、あの本の筆者だと。
「取材とは、本の…ですか?」
「おお! 知っとるのか!?」
「よく、カカシ先生が読んでいるので」
そう言うと、嬉しそうに…というかでれっと表情を崩して、自来也はしゃがんでシノと目線を合わせた。そして、声を落として問う。
「お前は読んだことあるか?」
「あれは、18禁でしょう」
シノが真面目に応えると、自来也はやれやれと首を振り、懐から一冊取り出してシノに差し向ける。
「まったく、最近のガキは堅くてダメだのぉ。このぐらいは、社会の常識! 大人になるために必要な知識じゃ! ほれ、ちょっと読んでみぃ」
「……………」
差し出され勧められた本を前に、シノは困ったように眉を寄せた。
二度程本と自来也を交互に見てから、意を決して本を受け取る。
最後ににやにやと不敵な自来也の笑みを見て、眉間の皺を深めつつ、シノは本を開いた。
断っても良かったのだが。
正直なところ、興味がなかったわけではない。
本の中身、というより、カカシが何を読んでいるのかが気になっていたのだ。
一度カカシの家で手にした時は、もの凄い剣幕で止められたが…。
「………」
18禁というからには、男女の性交渉に関するような内容なのだろう…と予想はしていた。
『イチャイチャ・パラダイス』という書名からもそう窺える。
しかし、それがどの程度のものなのか。
カカシがあれ程熱心に愛読する理由は何なのか…。
「………。……」
パラパラと流し読みしていくうちに、だんだんと恥ずかしくなってきた。
顔も熱くなってきたのがわかる。これ以上は無理だと、3分の1程のところでぱたんと本を閉じた。
「………あ…ありがとうございました……」
耳まで真っ赤にして、それでも落ち着いた声でシノは言い、本を自来也に突き返す。
「…ほほお。その様子じゃ、どうやらナルトとは違ってこの本の良さを理解したと見える」
からかい調子の自来也の声に、シノは俯いて黙った。
そんなシノの様子が更に楽しませたのか、自来也はにやりと、まるで子供が悪戯を思いついたような笑みを零す。
「!?」
突然自来也に担ぎ上げられ、シノは驚いて目を見開き、地に足を付けようと藻掻いた。
「お、下ろしてください!」
「いやいや。ナルトよりよっぽど役に立ちそうだからの~! すまんが取材に協力してくれ!」
「……道具がなかったのでは…?」
「そんなもん、どうにでもなるわい!」
「………」
なんとも勝手な話と藻掻いても逃れられないことから、シノが諦めかけた、その時。
一陣の風が吹き、次の瞬間には別の人間に担がれていた。
「カカシ先生」
「……………な~にしてるんですか、あなたは。俺のシノに手ぇ出さないでくださいよぉ」
声はいつもの呑気な声で、顔も笑顔なのだが。自来也には、カカシから立ちのぼる怒りのオーラがはっきりと見えた。
「いやぁ。ちょっとナルトの代わりに取材に協力してもらおうかと…のぉ……」
「そんなの、ナルトにやらせてくださいよ。さっき火影岩の所にいましたから」
焦ったような自来也に、カカシは怖ろしい笑顔で間髪入れずに言った。
「そ、そうか! 火影岩か! いや、すまん、助かった。じゃあ、ナルトに頼むわ…!」
じゃっ、と片手を上げ、厄介なことになる前にと早々に立ち去る。
カカシは自来也を見送ると、シノを下ろし、何も言わずに強く抱き締めた。
「カカシ先生…」
「遅いから、様子を見に来たんだ」
そう言うとゆっくりと体を離し、今度こそ、優しく微笑んだ。
「さ、行こっか」



その夜。
カカシが風呂に入っている間に、シノはベットに腰掛けて本を開いた。
また読みたかった、というわけではない。ただ、確かめたいことがあったのだ。
「や~。お待たせ~………って、シノ!?」
上機嫌で風呂から上がったカカシは、シノが自身の愛読書を開いているのを見て慌てた。
「だ、駄目でしょ! そんなの読んじゃ…!」
そんなの呼ばわりは本人も本意ではないが、今はそれでころではない。
どうしてもシノには読んでほしくないのだ。
これを読んで「やはり女の子と付き合いたい」などと言われては困る。非常に困る。
「前にも駄目だって言ったでしょ。なんで俺の言うこと聞かないの」
カカシはシノから本を取り上げ、きつい調子で言った。
するとシノはサングラスを取った顔をしかめ、少し口を尖らせて俯いた。
「シノ……?」
拗ねたようなシノの様子に、カカシは困惑気に覗き込む。
この様子だと、「女の子と…」云々を言いそうではないが。もしかしたら…という不安がカカシを襲う。
だが、次に言われたシノの言葉に、カカシは目を丸くした。
「カカシ先生は…こういうのが好きなんですか」
「………へ…?」
間の抜けたカカシの声にシノは顔を上げ、赤い顔でカカシを睨んで言った。
「つまり……その…やはり………女性の方が、いいのかと、聞いている……」
珍しく歯切れの悪い、尻窄んでいくシノの言葉。
カカシは暫し呆然とした後、むらむらと内側から湧いてきた堪らない保護欲と性欲に、シノを抱き締めてキスをした。
「………シノ…可愛い!」
唇を離した、カカシの第一声がこれ。
「……可愛いと言われても、嬉しくない。……それで…どうなんだ…?」
突然の抱擁にもキスにも感想にも動じず、シノは改めて尋ねる。その、心底不安そうな表情に、カカシはもう我慢出来なくなった。
電気を消すのも忘れ、ムードの欠片もなくシノをベットに押し倒し、再び口付ける。
長めのキスの後、息を切らしたシノの耳元で、囁いてやった。
「…………俺にはシノしかいないよ。シノだけ。シノがいい」
「……本当に?」
「ホントのホントに」
「……なら、いい…」
シノの目を見つめて力強く肯定すると、シノはほうっと息を吐いた。そして徐にカカシの首に腕を回し、今度は自らカカシに口付けた。





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あとがき
お…………、 お粗末様でした―――――っっっっっ!!! と言って、いつもなら逃げ出したいところですが。
なんだかもう、そんな気にもなりません(ははは…)

イチャイチャ・パラダイスがどんな内容なのかはご想像にお任せするとして。
この二人のイチャイチャ具合は、何と言っていいのやら…………。
しかし、昔書いてお蔵入りしたカカシノは、たいていがこんな感じだからなぁ…。
もう、いっそ他のも蔵出ししてしまおうかなぁ……(う~ん…)。。
内容はともかく、文体はあまり変わってないし(おいおい)
ちょっと、検討してみようかと思います。

ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました!
貴方の勇気とカカシノ愛の深さに、敬服いたします!!












(09/11/11)