※お酒は二十歳になってから!
ほろ酔いバースデー
リーが「ナルトくんの誕生日会を開きましょう!」と言い出したのは一週間前。
偶々ナルトの誕生日が10月10日…一週間後だと知ったリーは、バリバリ張り切って皆に呼びかけた。
任務が入るかどうかが最大の問題だったが、噂を耳にした火影が考慮したのか、上手い具合に仕事が入らなかった。
こっそり集まって話し合われた企画は、一週間の内に随分まとまったものとなった。
広さが必要なパーティー会場には少々困ったが、日向は駄目だから油女家で的なノリでキバが決定してしまった。
眉を寄せるシノを尻目に、皆一度は行ってみたいという興味も手伝ってシノに頼み込み、結局は油女邸で開かれることとなったのだった。
そして、当日。
「ハッピーバースデー!! ナルト!!!」
企みは見事に成功し、ナルトの誕生日会は良い始まりを迎えた。
驚かせることもできたし、ナルトも皆もとても嬉しそうだ。
ネジやサスケ、シカマルやシノは、はしゃぎはしないがそれなりにこの宴を楽しんでいる。
そんな中、突然キバがシノの背中に勢いよくおぶさってきた。
「……なんだ、キバ」
「へへ~。おら、お前も飲め!」
迷惑そうなシノにかまわず、キバが透明な飲み物の入ったグラスを差し出した。その匂いに顔をしかめる。
間違いなく、酒の匂い。
「チョウジ。これ酒じゃねーか」
「ひ、ヒナタ様! そんな物を飲んでは…。って、テンテン! リーに酒を飲ますな!!」
「お、おい。サクラ、いの! やめろ! 離せ!!」
見ると、シカマルやネジ、リーもサスケも被害を被っている。
「キバ…お前が持ってきたのか」
やたらと大きな手提げ袋を持っていたことを思い出し言うと、キバは御機嫌で答える。
「紅先生からの餞別だ! なあ、赤丸!」
アンッ!とこちらも明るい返事。
シノは頭を抱えた。
紅先生……。
そしてはっとして顔を上げる。
ナルトが見えない。
彼奴のことだ、誰よりも先に口にしていそうだが…。
そう思っているところへ、問題児が予想通りやってくれた。
いきなりキバが強い力で引き剥がされたかと思うと、やはりナルトだ。
「シノにひっつくな! この犬男!!」
「あんだと、このラーメン野郎!!」
なぜだか取っ組み合いを始め、赤丸も参戦してもう滅茶苦茶。
「お前ら…」
シノは押し殺した声で小さく言うと、息を吐き、蟲を放った。
絶叫と悲鳴が轟いたが、無視。
大人しくなるまで、キバとナルトのチャクラを奪った。
結局、他の面々も酔い潰れて帰すのも難しくなったので、隣の座敷に布団を用意する羽目になった。
「シノくん、すみません。僕が誕生日会をやろうといったばかりに…」
布団を敷き終え、さて潰れた連中を運ぼうとなった時、リーが心底申し訳なさそうにシノに言った。
しかし、シノは首を横に振る。
「否。こうなったのはキバと、紅先生の責任だ。気にする必要はない。それに、誕生日会自体は、なかなか楽しいものだった」
シノが真面目にそう言うと、リーは嬉しそうに顔を上げ「そうですか?それは良かった!」と破顔した。
そしてテンテンを揺すり起こして布団部屋へ付き添っていく。
シノも、キバを連れて行こうと手を掛けると、その手をキバの隣に転がっていたナルトに捕まれた。
「シノの部屋が見たいってばよ」
唐突に、そう告げられる。
「ナルト。今は寝るべきだ」
「嫌だ。シノの部屋に連れてけ。今日は俺の誕生日なんだぞ!」
駄々をこねるナルトに、シノは困ったように眉を寄せた。
周りを見ると、ネジがヒナタを、シカマルがいのを、サスケがサクラを担当している。
残っているのは飲んでも平然としているチョウジだけだ。
「チョウジ。キバを頼めるか」
「ん~?…ああ、いいよ?」
散らかった中でしっかり食べ物を確保し、未だに食べているチョウジにキバを頼み、シノはナルトを連れ出した。
部屋に行くためには庭に面した廊下を通らなければならない。
夜の静けさとひんやりとした空気に、知らずふるりと体が震える。
すると、背中にそっと温かさが触れた。
見ると、ナルトが背中にひっついている。
本当にキバとよく似ている、と漠然と思った。
「寒そうだから。俺、今すっげーぽかぽかしてっからよ!」
へへっと笑って更にぎゅっと抱き付く。
確かに、温かい。
そうかと適当に相槌を打ちつつ、シノは自室に辿り着いた。
「ここが俺の部屋だ」
襖を開けて中を見せると、もういいだろう、とナルトに戻る様に促す。
だが、ナルトはシノの背中から離れてかまわず部屋に入り電気をつけた。
「うっわ。本と巻物と標本しかねーってばよ」
無遠慮に、しかし面白そうに部屋の探索を始めるナルトに、シノは溜め息をついた。
図鑑や標本、珍しい本を眺めて、やれアホ面やら違いがわからないやらあろうことか気持ち悪い等と
散々な評価を下しては楽しそうにけらけらと笑う。
酔っているのだと仕方なく思っていたシノも、もしかして趣味の悪い悪戯かと思い始めた時、
ナルトがふいに顔を上げた。
しばらく部屋を見回してからシノの顔をじっと見つめて。
にかっと笑う。
「なんか、シノの部屋だな!! シノらしいってばよ!」
「…………俺の部屋なんだが……」
そうは言うものの、ナルトの言わんとすることもわからないでもない。
自分らしいと言われて、悪い気はしない。
「なんか、何もないけど、すっげー落ち着く…」
そう言って、ナルトは畳みにべたぁ~と寝そべった。
「…………」
「…………」
「…………ナルト…?」
畳に突っ伏したまま沈黙したナルトに、シノが眉を寄せて覗き込む。
すると、鼾が聞こえてきた。
「………ここで寝る気か?」
問うも、最早返事はない。
仕方ない、とシノは押し入れから布団を出して、寝入ってしまったナルトをその上に転がした。
掛け布団を掛けてから、やれやれと小さく息を吐く。
今日は任務や演習の時以上に疲れた気がする。
自分もそろそろ眠りたいと、顔を上げた。
「………向こうで寝るか…」
自分の布団を貸してしまったため、皆と一緒に座敷で寝るしかない。
そう思って立ち上がろうとしたシノの手首が、いきなり掴まれた。
「?」
見れば、布団の中からにょきっと出た手。
そして、眠ったと思われていたナルトが、布団の下からシノをじっと見上げていた。
「なんだ…?」
「…………ここに居ろよ」
強く掴まれた手首がぐんと引かれて、立ち上がろうとしていて不安定だった体が体勢を崩す。
「な……おい…っ!」
倒れ込んだ体ががっちりとナルトに抱き締められて、シノは身動きが取れなくなった。
「放せ、ナルト」
「や~だね」
藻掻くシノに腕だけでなく足まで使ってしがみつき、にへへへと不気味な笑いを零すナルト。
「今日は俺が主役なんだってばよ」
ぎゅうっと抱き付く力が強められ、シノは一度動きを止めて、それから大きく深く溜め息を吐いた。
「この、酔っ払いが…」
最後の抵抗にぼそりと抗議を呟けば、へへへ…と嬉しそうな声が返ってきて、僅かに抱き付き直してくる。
なかなかきつい体勢だが、これ以上何を言っても無駄だと諦めて、シノはナルトが解放してくれるのを待つ事にした。
強制的に脱出してもいいのだが。
懐いてくる今日の主役を邪険に扱う気にはなれない。
だが。
「ナルト……せめて足は外せ」
その要求が、幸せの真っ直中にいる酔っ払いの耳に届いたかどうかは、言うまでもない。
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あとがき
はい! というわけで、ナルシノです!
昔なぜか思い立ち執筆に至った誕生日話。
リーが出てきたのは初めてでしょうか?
シノとリーの話も書いてみたら面白そうですね。
ナルトシノ以上の天然コンビ!
でもリシノは…ない……かな…。
リ(リー)シノとチョ(チョウジ)シノはある意味絶対領域かと。
書くにはそれ相応の覚悟が必要な気がひしひしとします…。
(あ、でも。チョシノっぽいものは読んだことがあります)
話が逸れましたが。
ナルシノのストックはこれでなくなりました。
評判はぼちぼちなので、ぽつぽつと続けて行こうと思います。
お付き合いの程を、よろしくお願い致します…。
では。誕生日企画恒例(?)の一発。
気合いを入れていきましょう。
姓はうずまき、名はナルト。木ノ葉に生まれし風雲児!
己の忍道貫くために、運命の壁をぶち破る!
意外性ナンバーワンのドタバタ忍者、我等がNARUTOのヒーローに、盛大な拍手と祝杯を!
(準備はOK?)
ナルト!! ハッピーバースデー!!!!
(07/10/10)